よく登場する八ヶ岳南麓・甲斐大泉のロッジ山旅。そこのご縁で何年か前より知合いになれた画家の渡辺隆次さんが新潟の砂丘館にて個展を開催されました。奇しくも同窓の大先輩という事で親しくさせて頂いていますが、本来なら「雲の上の人」…。
渡辺隆次さんはここ一・二年、ロッジ山旅を打ち合わせの場(編集会議)に使い、『森の天界図像 わがイコン 胞子紋 渡辺隆次きのこ画文集』という素晴らしい画文集を刊行されました。
胞子紋とは、きのこを紙上にそっと置いておくと、カサから波状の胞子の文様が落ちる、それを定着させたものです。
八ヶ岳南麓に移り住んで以来、自然の生き物、植物、きのこ、昆虫などを絵のテーマにされてきましたが、何時の頃からか、この偶然性を含んだ胞子紋の世界に魅了され、今はすでに“わがイコン”にまで昇華させた作品となっているのです。
さて、その「渡辺隆次 胞子紋の世界展」にロッジ山旅の木曜山行常連の人たちと共にオーナー長沢夫妻の運転する「山旅号」にて出かけてきました。何から何までお膳立ての上、しかも隆次さんのお口添えもあり、砂丘館館長・大倉 宏さん自らのご案内付きという“大名旅行”、贅沢な一泊二日の旅でした。
写真は砂丘館の玄関口ですが、これは旧日本銀行新潟市店長役宅であり、この「古町」一帯は日本海に面した砂丘地帯とのことで「砂丘館」。初めての訪問地で、この事実は驚きでした。
空襲で焼け残った一帯には、このような古くも趣きのある邸宅が多く現存し、今も様々現役の場として使われています。
メインの砂丘館で渡辺隆次さんの作品をゆったりと鑑賞後には、大倉さんのご案内で、地元の人ならではの裏小路などを辿り、名所の数々を巡り歩きました。なんと1万5千歩あまりの歩行!
最後には日本海側まで出て砂丘館に戻り、夕方には大倉さんが営まれている「絵屋」というギャラリーにも立ち寄り、そこでも宮嶋 美明と云う方の遺作展鑑賞。とにかく見るもの見るもの濃厚で、受け皿はオーバーヒート気味。
普段、山ばかりで海辺にはあまり来ることがありませんでしたが、何と魅力的な町かと、知らない事の多いことを痛感しました。
夕食はご紹介してもらった「絵屋」近くの「魚や片桐寅吉」という網元の料理店でのコース料理。なんとも贅沢極まる締めでした。
おかげで?その晩はビジネスホテルの一室に戻り休もうと思っても全く寝付けず、しばらくはラジオ放送をネットで聴いたりしていましたが、最後には起き出して友人への旅先からの手紙書きなんぞを始めた始末。
歩き回った疲労とは別に、脳の興奮は如何ともし難たかった訳です。
それにしても充実した二日間の旅、皆さんに感謝の旅でした。
<写真は夜の電灯が灯る「片桐寅吉」>