なかなか梅雨入りしない関東地方、多少蒸し暑くても真夏の暑さに比べると、まだまだ。そこで晴れマークを見据えて、長年の“懸案”だった御正体山に行ってきました。この山は神奈川・山梨の県境、西側は山中湖、南は丹沢の西末端、北側は山梨の都留市という位置で、どこからでも微妙に遠く、また最近ではバスの便がひどく悪い山域となっています。
コースもいろいろあるのですが、どこから登っても下ってもそれなりに時間がかかります。で考えた末、やはり道志みちを辿って道坂峠まで車で入り、そこから長い稜線をピストンするコースに落ち着きました。早く出発出来るし、日の一番長い季節を利用し、のんびり歩いても下山時間に心配がない、という利点を生かした計画です。
<写真は稜線を辿った末、ようやく見えた御正体山頂、これから最後の急登が待っている!>
私は道志方面の山が好みなのですが、それは自分が初心者で歩き始めた頃の懐かしい山の雰囲気が感じられるからです。
当時は近くて便利な丹沢にしょっちゅう行っていましたが、その後丹沢はブナの立ち枯れやシカの食圧、入山者過多によるオーバーユース、乾燥化や暴風雨被害の増大などなど、かなり様子が変わってしまいました。
が、この県境付近の山々は交通が不便であることも幸いして?、今だ静かなかつての雰囲気を残した山歩きが出来るのです。例えば、途中の大きなピーク岩下ノ丸周辺からは立派なブナ林となり、こんな見事なブナとも出会えます。
しかも今回ほんとうに驚いたのは、この山頂付近の様子です。まるで30年前の西丹沢の檜洞丸(ひのきぼらまる)に行った日にタイムスリップしたような錯覚に捕らわれました。
ブナ林と、足元のコバイケイソウの群落。懐かしさでいっぱいになりました。檜洞丸では木道が敷かれましたが、植生はそのままそっくり。(原因はシカの食圧という点で、喜んでばかりもいられないのですが…)
このコースは終始、樹林帯の中を歩くので展望はほぼありませんが、その代わり蒸し暑さをよそに緑陰と涼風、そして夏鳥の囀りに浸れました。
ようやく何十年越しかで来ることが出来たこの山が深く心に刻まれました。