旅の四日目、もう一つの目的だった「北のアルプ美術館」を訪ねる日です。ここは山梨県・八ヶ岳の南麓にある、私も度々個展を開いている日野春アルプ美術館の姉妹的な美術館、久しぶりの訪問です。
企画展の「山下康一墨絵展」を見たあとには常設の山の文芸誌『アルプ』にまつわる作家たちの作品を見せてもらいました。やはり一番好きなのは大谷一良氏の版画です。しばし静かな鑑賞時間を過ごした後は、山崎さん憩いのお部屋・移築した「串田孫一の居間」で紅茶を頂きながら歓談のひととき。
ユーモアあふれる話し口の山崎館長さんとの会話は穏やかに途切れることもなく、話題豊かに本当に愉しい時間でした。「あー自分はこの時間のために、北海道の知床斜里まで来たんだなー」と心から満足できるような思いのなかで、昼前の「釧路行き」に乗車するため、北のアルプ美術館を跡にしました。
知床斜里から乗車した釧網本線車窓からは、相変わらずの好天のもと、列車の動きと共に斜里岳もどんどんと姿を変えて、札弦駅を過ぎるまでよく見えました。
もう十分と思えるほど昨日描いた山ですが、見えれば我慢できず、数秒クロッキー的に次々と動く列車から名残惜しむように何枚も描き続け、小さなスケッチブックが一冊それで終了。もうこれでいいかな…と、やっと落ち着いて車中の人となりました。
それでも路線から広がる大地はどこまでも美しく、どうやって描いたらこの美しさが表現できるだろうか…と頭のなかには無数の絵が巡っては過ぎていくのでした。
そして夕方前に到着した帯広駅。そこでは最後の目的?がありました。「六花亭」の本店に行くことです。
普段、およそ観光地とか人が集まるような場所には行かない北海道の旅ですが、今回だけは一度行ってみよう!と店の喫茶室が閉まる前の時間帯に訪れました。そして「帯広本店のみ」と云うイチゴのブラマンジェを頼み、憧れの?ティータイムを過ごしました。「六花亭」は文化的なことにも経営理念を傾け、中札内には北海道の開拓農民画家である坂本直行の作品を中心に、私の尊敬する洋画家の一人・相原求一朗の作品など多くをコレクションし展示している美術館があります。そうした店の本店なので一度訪ねてみたかったのです。いつもとちょっと違った“人並み?”な楽しみを満喫できた北海道の旅となりました。
長い旅の話にお付き合いいただき、ありがとうございました。
今回の北海道の旅はこれでおしまいです。
雪の少ない北海道でしたが、天気に恵まれたいい旅でした。
<オホーツク海に浮かぶ知床連山>