いよいよ旅の本番、斜里岳スケッチの日です! 中日の三日目はこれ以上ないという晴天に恵まれ、まさにスケッチ日和。斜里町内で借りられるレンタカーを探せたので、まずは昨日乗車していないオホーツク沿いを走る釧網本線際の道を網走方面に向かいました。というのも、斜里岳スケッチをしたいのは山々なのですが、午前中は完全に逆光となり描けないのです。そこでまずは一度立ち寄りたかった釧網本線の「北浜駅」に向かったのでした。<写真は濤沸湖越しの斜里岳>
海沿いを走っていると「はなやか」という道の駅に出くわしました。トイレ休憩がてら立ち寄ると、なんとその売店や食堂のある道の駅は鉄道の「浜小清水駅」も兼ね備えていて、トイレから出たすぐ左の扉がホームの扉となっています。
さてホームに出てみると、向こうの丘の上に変わった建物が見えます。何だろう??
行ってみると「フレトイ貝塚」とあります。登ってみると変な建物は展望台でした。足下にオホーツク海があり、知床連山が端まできれいに見通せます。
気づけば一人、大きな三脚スコープで海を見ている青年が…。海鳥の観察だそうで、寒いなか熱心にずっとスコープを覗いています。好きでないと出来ないな〜と思いつつ、私はこちら側で遠望する海別岳(うなべつだけ)のスケッチ。しかし風が冷たく、実際のオホーツク海は凍ってないのに、自分の水彩のオホーツク海は画面の上で凍ってしまいました。
<写真はフレトイ展望台から 右に見える建物が浜小清水駅 遠くに霞むのが海別岳>
途中、原生花園や濤沸湖(とうふつこ)の駐車場にも立ち寄りスケッチしたり、あちこち寄り道しながらやっと目的の「北浜駅」に辿り着きました。ここは以前、網走から乗車した釧網本線で車内から見かけて、なんて趣きのある駅なんだろう、降りてみたいなーと思った場所で、ようやく念願叶いました。
駅舎にはカフェが併設されていて、やはり昼を食べるならここでしょ!と思い、早めの昼食は「停車場」というこの店のランチ。
昔の木の車両で食事しているような雰囲気で、北浜駅で過ごせる時間をランチと共に味わいました。食事後、懐かしい丸形ポストに前夜書いた葉書を投函し、出発。
本命の斜里岳スケッチがあるので、そろそろ斜里町方面へ戻らなくてはなりません。と、行きには気づかなかった西側の濤沸湖に入る道を目に留めそちらへ。駐車場から見る濤沸湖には白鳥が数羽憩っていて、向こうには裾野を美しく引く斜里岳、まさに絵葉書のような光景です。
振り返れば裏手に高台へ登る坂を見つけ、行ってみれば「白鳥公園」。櫓があったので更に昇ってみましたが、展望は坂の上の方がよさそう。そしてそこで一枚、濤沸湖越しの斜里岳を描きました。
日がかなり傾いて来ました。あまりのんびりもしていられません。斜里岳がよく見えるポイントを探せるでしょうか?
さて朝一番、レンタカー屋のお姉さんに教えてもらった“いい場所”が戻っても見つけられません。だんだんと焦って、とりあえずの場所に、エイ!ヤー!ここだ!と大きな和紙菊判を広げました。行きあったりばったりはいつものこと。
しかし雪面が軟すぎてその上に置いて描くことが出来ません。サロベツ原野では出来たことが出来ない! 再び焦って、ふと見ればレンタカーの軽自動車ボンネットが平じゃありませんか。狭いスペースで、切り返しをしまくりボンネットをやっとこさ、描くのに丁度いい場所に設えて、どうにか描き始められました。
しばらく夢中になっていると、突然見知らぬ車が脇に停まりお兄さんが「だいじょ〜ぶ?」と声を掛けてきます。「あ!すみません、ここ邪魔ですか?」と反射的に謝る私。実はその人はまさかそんな場所で絵を描いてるなんて思い及ばす(当然です)何か困ったことが起こった人かと察して声を掛けてくださったようです。なんて親切なんでしょう。お礼を言って、その方も安心して去っていかれましたが、もし本当にトラブル中だったら地獄に仏でしょう。北国の厳しさと温かさを感じた出来事でした。そして何とか手がしびれて感覚がなくなる頃には絵も終了しました。