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南アルプス・塩見岳 その2

塩見岳の黎明です。広くない小屋は当日、満室。人と荷物でごった返すなか、早々に外で朝食を済ませ山頂に向け出発しました。予想通りの好天で、前夜には星が煌めいていた空そのままの透明感に細い月が浮かんでいました。

 

塩見小屋の立地は森林限界を超えた所なので、出発してハイマツ帯はすぐに岩稜帯になり「これぞ、アルプス!」と言った高度感と登攀っぽい登りが続きます。私にとっては冬はひたすら眺めるだけで、夏にしか味わえない3000メートルの世界。風もさほどなく快晴に恵まれたことに感謝しつつ、高揚感のなかで一歩一歩山頂を目指します。

 

この幸福感が登山する所以でもあるでしょうが、人生のなかでもこんな時間はそうそうありません。自分の健康はもちろんですが、回りの環境(病人を抱えているとか、子育てとか親の介護等など)もある程度整っていなければ来ることはできません。久しぶりのアルプスの岩場で無心でありながらも、喜びのなかにそうした事が去来しつつ、若い時とは違い、あと何回こうした山を味わえるのか…という思いもありました。山の幸福な時間、描くことはその時間と空間を白い画帳にしるす行為でもあると感じます。

 

当日の写真にて素晴らしい日本の南アルプスの景観をご笑覧ください。

(まずは塩見岳山頂から俯瞰した蝙蝠岳(右)とそれに連なる山稜)


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