大日岳を御西小屋からピストンした三日目の朝、その日は辿った道を折り返しで歩く復路日程です。大日岳の山頂ではちょうどガスに包まれ真っ白でしたが、登り下りの道中では立派な山容の大日岳を十二分に楽しみながら、また豊富な高山植物を愛でながらのハイライトでした。
さて、復路。本来の宿泊は本山小屋を通り過ぎガレ場の急坂を下り御秘所(おひしょ)の岩場や草履塚のピークも越えて辿り着く切合(きりあわせ)小屋の予定でした。ところが、梅雨明けして好天がしばらく続く天気予報のせいで一斉に登山者が山に繰り出したのが、この日だったのです。スケッチなどで時間を食った分、到着した午後の切合小屋はア然とするほどの混雑ぶりでした。
小屋の真ん前に水場のあるこの小屋に泊まれると楽ですし一旦は宿泊手続きをしたものの、同じ混み合うのなら初日にお世話になった三国小屋の方がいいのでは…と判断し、普通なら小屋にザックを下ろし寛ぐべき時間帯でしたが意を決して再び荷物を背負い上げ、二時間弱先にある三国小屋を目指し歩き始めました。しかし、その1時間半の厳しかったこと! そして、着いた三国小屋では・・・。(写真は夕刻辿り着いた三国小屋前、小屋内では炊事ができず外で夕食の準備を始めるところ)
その日は毎年行われている有志募集中学生の飯豊山登山でした。で、彼らの宿泊先は三国小屋だったのです。夕刻やっとの思いで辿り着くと、小屋二階は中学生14人、付添いの先生やガイド10人で完璧に専有。そして階下は登山口・山頂の両方からやってきた登山者で満員だったのです。
結局、苦肉の策で管理人室脇のコンクリの土間に「立入禁止」のテープを渡し、辛うじてトイレに行き来する人たちに踏んづけられないような工夫を施してもらい、一晩中「往来」の激しい場所で一夜を明かしたのでした。当然ながらゆっくり眠ることは出来ませんでしたが、疲れた身体を横にして休めるだけでも助かりましたし、管理人さん曰く「これでこの小屋も土間に人が泊まれることがわかりました」と。
翌朝は再び見晴らしのよい小屋前から美しい日の出、朝焼けを拝め、ゆっくりと朝食をとった後に昨日の“後遺症?”が残るガクガクの足で慎重に剣ヶ峰の岩場を下り、長い川入登山口まで無事下り着き、天候に恵まれた三泊四日の夏山の旅を終えました。(写真は剣ヶ峰を下る中学生の集団)