福島と山形県境の飯豊(いいで)連峰はそれこそ大昔からの憧れで、一度は訪ねたいと願っていました。この夏、その夢が叶いました。どこから登っても急登に次ぐ急登。北側の石転び沢の雪渓から登る技量と体力は自分にはないと分かっていましたので福島側の川入集落からの大ピストン縦走を計画しました。それも普通の日程より一日分多めの設定です。
天気が良ければ巨大な山容を稜線からほしいままに描けるかもしれない…。そんな期待を抱き、自分のザックには絵の道具を主に、そして共同装備を担当してくれる山友の同行で東北に向かいました。が、東北地方の梅雨明けはまだだったようで、川入集落での前泊では明け方から雨が降り出していました。(写真は三国小屋からの大日岳、夕陽のシルエット Aさん撮影)
初日、民宿に泊まったおかげでご主人が登り若干短縮可能な取り付きまで送ってくださいました。久々に肩に食い込むザック、いきなりの急登、地面に落ちるのは滴り落ちる汗なのか空からの雨なのか…ものすごい大汗。小雨模様で却ってカンカン照りでなく助かりました。
最初の水場に到着し甘露で喉を潤し、さてその先には難所の「剣ヶ峰」が待っています。(写真が剣ヶ峰の稜線を上から見下ろしたところ)が、ガスが巻いていて然程の高度感も感じないまま、無我夢中でいつの間にか三国小屋に到着。と着いた途端に我慢していたかのような篠突く雨、ギリギリセーフでした。当日は小屋もほとんど貸切状態で、二階スペースを占領し、のち階下に単独男性と三人パーティのみ。夜は管理人さんの温かいもてなしで、皆で円座になり山談義に花を咲かせてのミニ宴会。こんな心温まる避難小屋の時間は滅多になく、振り返ればこの山旅をより想い出深いものにしてくれていたと感じます。
そんなこんなで過ごしているうちに、一雨後で洗われた空が見事な自然現象をプレゼントしてくれました。今まで出会ったことないような美しいブロッケン現象です。背に太陽、正面にガスが沸いた状況で自分の姿がガスに影として映し出されるものです。その時のものは影の周囲がきれいな虹色の輪になり、それは素晴らしいものでした。
そして太陽がグングンと傾くにつれ変化していく空のダイナミックさには、もう言葉がありません。この夕刻が、つまり今年の東北の梅雨明けだったのです。その後に続く飯豊の山並みのシルエットと光、雲が織りなす現象はまさに天体ショーとも言ったスケールで展開し、またとない山上での夕刻を過ごすこととなりました。
*数回に渡り二日目以降の縦走を追ってご紹介していきたいと思います。*写真は同行のAさん撮影のものも含みます。