山好きな方が見ればすぐに「あー、あそこね…」とお分かりでしょう。先日、あまりの暑さから山仲間と一時の“脱出”。歩き始めの位置がすでに2000mを越える麦草峠に向かいました。平日とは言え、皆さん考えることは同じ。到着時の駐車場はすでにほぼ満車でした。運良く停められて、さあどこに向かおうか・・・。「のんびりしに来た」ということでのんびりと高見石に向かって登り出しました。安直な選択ですが、思えば高見石に行くのはかなり久しぶりです。そして気づいたのですが、雪の時期ばかりで夏道はあまり記憶になかったのです。久しぶりだと初めてのように感じるので、忘れっぽいのもいいものです。(写真は高見石の上から見下ろした白駒池です)
北八ヶ岳といえば「針葉樹と苔の森」ですが、この道もご多分に漏れず北八ツらしい登路です。そして何と言ってもいいのは、森の香りです。独特な針葉樹林の匂いに包まれ「あー、北八ヶ岳を歩いている…」と心が満たされます。またなんとも言えない美しいトリたちの声も響きます。数少ない判別できる鳴き声は「メボソムシクイ」で、このジュリジュリジュリと高く響く声を聞くと「あー夏山に来たな〜」としみじみ仕合せな気持ちになるのです。この幸せ感は何度、夏山が巡りきても色褪せることなく毎年同じように感じることです。
しばし急登と歩きやすい庭園のような道を繰り返すと間もなく丸山到着。視界のないピークですが、一応本日の最高点。そこから高見石小屋までは下って割りとすぐですが、ちょうど昼時だったせいか小屋前の広場は多くの登山客でかなり賑わっていました。北八ツのこの辺りにやって来る登山者は“オシャレな”若者ハイカーが多い雰囲気、昔気質?の登山者はそそくさと高見石の方へ移動し、眼下の白駒池の眺望を楽しみながらの昼食としました。お尻の下の「高見石」巨岩はお日様に温められて「岩盤浴?」、頬をなでる風は高山の涼風、自然のお膳立て=贅沢な設定でした。
混み合うポイントも、ちょっと場所を変えたりコースをずらすと意外なほど人影が少なくなると、今回の人気コースでも体験しました。
下山時に通過した白駒池はバスツアーの観光客がドッと次々押し寄せるような「一大観光地」と化し大騒ぎでしたが、そこから白駒池駐車場までの10分足らずをやり過ごすと、今までの喧騒が嘘のようにひっそりとした針葉樹とシャクナゲの森に戻ります。
脇に国道299号が通ってはいるのですが、その事が不思議なほど深い森の如き錯覚に陥ります。この一帯は「白駒の奥庭」と名付けられているようですが、麦草峠までのホンの短い距離に、騙されたようなしっとりとした森の歩道があるのが何とも愉快で、帰りがけ最後のお茶タイムをゆっくりと“奥庭”にて過ごしました。