「つれづれ」の12月5日にご紹介した大森久雄氏編のヤマケイ新書『山の名作読み歩き』。そこにあった鷹野照代の「風の道」が昨年末、山仲間での小さな飲み会で話題になりました。そこを訪ねてみよう…という話になり、春を待ってその仲間で「風の道」に出かけました。
私はたまたまその「風の道」の出典である『アルプ』184号「特集 風」(1973年6月)をその飲み会で手に入れたのでした。そして一昨年刊行された山口耀久(あきひさ)著『「アルプ」の時代』にもその「風の道」鷹野照代が取り上げられていました。思いは膨らんで行きました。
当日は甲斐大泉「ロッジ山旅」の長沢洋さんのガイドで大森久雄氏も同行され、かつては村人達が使っていたであろう山道を辿りました。が、鷹野照代が歩いた頃以上に荒廃しているのは当然で、おぼつかない所もあったりでようやくその峠に着きました。今にも泣き出しそうだった空で、弁当を広げる余裕もなく再び登った道を下りましたが、帰路には大森さんが調べておいてくださった鷹野照代の菩提寺も参ることができました。照代夫妻が眠るところからは、その「風の道」の峠が美しく見通せるのでした。想っていた以上の照代の思いの深さに触れたような気がしました。