古くからの友人に松本全廣(まつもと・まさひろ)という作家がいます。2008年年末に急逝してしまいました。私たちは親しく彼を‘ぜんこう’さん、と呼んでいました。平面の作品のみならず、篆刻、陶芸、書などなど、あらゆる作品を生み出しています。ちなみに私の山の絵を額装する時に押印している落款の多くは彼が彫ってくれたものです。
全廣さんの妻の冬美さんも、ものづくりの素晴らしい作家です。
冬美さんによって、全廣さんの作品たちが静かに息づくように今の時をそっと見つめ生きています。
その作品の一部は冬美さんとデザイナーの「二月空」さん達に編まれた『ZENKO NO TE』(作品帖)の1と2に見ることができます。
今回は数年の時を経、その『ZENKO NO TE』に掲載された作品の展示が神保町のギャラリー「福果」で開かれました。遠くを見つめている全廣さんの手から生み出された人形たち、私が度々彼らのアトリエを訪ねた時に佇んでいたのと変わらずに、今回も静かに遠くを見つめていました。多くの方に、この松本全廣という作家のことを知って欲しいと思っています。
『松本全廣 作品帖』のご紹介